こんにちは、この世界の教科書です。
今回は、最近よくSNS上(特にX)で炎上や口論が巻き起こっている「朝鮮飲み」「韓国飲み」というワードに関して。
「朝鮮飲み」「韓国飲み」がどういった意味なのか?や、そもそも韓国人がお酒を飲む時に横を向く理由、朝鮮飲みのような飲み方をした日本の政治家が帰化人と言及されることについて、それぞれ詳しく解説していきます。
政治にまつわる話の、知っておいてほしい大前提

SNSが流行するようになって、政治にまつわる話も、XやYouTubeなどのさまざまな媒体で議論されるようになってきましたね。
「政治・宗教・野球の話はするな」とはよく言ったもので、SNS上で政治に関する議論が増えてから、やはり炎上や、違う思想同士の口論、煽り合いのような状況は頻発するようになりました。
議論される場があるというのは社会の発展において、とてもよいことです。ただ、人と人との衝突が増えるのは、悲しい。
そもそも大前提として、政治や宗教に関する思想が人によって違うのは当たり前のこと。自分の意見と違うからと言って、意思を尊重されず否定されたら誰だっていやな気持ちになります。
「都会で羽振りよく、友達に囲まれて暮らしたい」
「田舎で一人でも、のんびりと読書にふける人生が幸せ」
「貧しい大家族で大変だけど、みんなが笑顔でいてくれるからそれだけでいい」
人によって生き方が違うのだから、意見が違うのも当然なんです。人それぞれの生き方が、信仰する宗教や、応援する政党にも影響するということを知っておきましょう。
私は、SNSで議論の場がふえたことに関してはとても良いことだと思っています。ただ、相手の意見の否定ばかりの口論は、あまり有意義ではありません。
人生で起きるさまざまな要因で、人それぞれがちがった趣味嗜好になっていくのは当たり前のこと。全員が同じ生き方や同じ趣味、同じ人生を強いられる世界よりもよっぽど幸せだと思いませんか?
自分と違う意見の人をつい否定してしまう人は、「この人は自分とは生き方が違う。何が趣味で、どう生きたいかも違う」ということを、ふと冷静に思い返してみて下さい。「多様性を知る」ことが、まずは最初の一歩です。
「朝鮮飲み」「韓国飲み」とは?
では、ここからが本題。
「朝鮮飲み」「韓国飲み」とは、韓国の伝統的な飲酒マナーに由来する動作で、一般的には目上の人とお酒を飲む際に顔を横に向けて飲む仕草のこと。
日本ではこの飲み方が韓国式としてSNSなどで話題になり、ペットボトルの水などもふくめ、広く飲み物を飲む際に、手で口元を隠す仕草が「朝鮮飲み」と呼ばれるようになりました。「手で口元を隠して飲み物を飲む仕草」を短く表した言葉とも言えるかもしれません。
ただ、この「朝鮮飲み」という言葉は元々は存在せず、X上で議論する際に差別的なニュアンスで使われるようになったのがきっかけ。批判に用いられるために作られた造語、差別用語に近い言葉なので、使用には注意が必要です。
韓国人がお酒を飲む時に横を向く理由:元は儒教から来たマナー

この「朝鮮飲み」と言われる横を向いて口元を隠す仕草、もともとは儒教文化の影響で、年長者や上司に対する敬意を示すためのマナーでした。
この所作は、漫画『美味しんぼ』でも取り上げられたことがあり、韓国の伝統的なマナーとして紹介されました。この描写により、日本国内でも一部の人々の間で認知が広がるきっかけにもなりました。
(引用元:小学館)
そもそも、韓国は今でも儒教の厳しい国です。 目下の者は目上を敬い、目上の者は目下を守るという絶対の教えがあります。上下関係に厳しい文化を持つ国だからこその礼節。
他にも、年配者とお酒を嗜む際の韓国の伝統的マナーとしては、以下のようなものがあります。
- 目上の人からお酒をもらう時は、立ち上がってその人の横に立ち、お辞儀をしてから杯を受け取る
- 目上の人に酒を注ぐときは、酒瓶のラベル(商標)が見えないよう右手で持って注ぐ
- 左手は酒瓶か、右手首・肘・脇に添える
- 酒の量はグラスの70%を目安に注ぐ
- お酌をされたら両手で受ける
- 乾杯の時は、目上の人よりもグラスを少し下げて合わせる
- 目上の人の許可なく酒を飲まない
- 目上の人の前で酒を飲む時には横を向いて視線を避け、口元を手で隠す
目上の方に礼をつくす。慎みや礼節を重んじる日本においても通じるところのある、厳かな教えといえます。
かなり込み入った教えで大変そうですが、現在はここまで古風なやり方は少なく、状況などに応じてもっとカジュアルに飲むケースは多いようです。
この儒教から来たマナーそのものは、趣深くとても素敵な文化・様式ですよね。
「朝鮮飲み」は飲酒マナーであり、ペットボトルの水などは無関係
上記の通り、この飲み方はそもそも目上の人とのお酒の場で適用されるマナーであり、現在X上で議論されているような「水」や「ペットボトル」に関しては、この韓国の教えとは関係のないものです。

上のように「朝鮮飲み」をする政治家として作られたまとめ画像もありますが、これらの飲み物も、もちろんお酒ではなく水です。
「口元を手で隠す」という共通の飲み方に気づいた時に、何か因果関係を探りたくなる気持ちもわかりますが、「人前で飲食する際に口内が見えないよう手で隠す」という行為は日本でもかなり一般的。
これらは国会中に水を飲むシーンの抜粋が多く、見る限りではほとんどが国会議事堂で広く用いられる透明なペットボトルか透明グラスでの給水場面です。
水を飲むだけで口元を隠すなんて気にしすぎなような気もしますが、おにぎりの食べ方で数万人に文句を言われる時代ですから、映像や画像に残るシーンでは、行儀よく水を飲もうと気を付けている可能性は十分あります。
現にこのようにスクリーンショットを撮られてしまう国会中、透明な容器から水を飲むのに口元を隠すというのは、「朝鮮飲み」などとは関係なく、割と一般的に考えられる所作の範囲と言えるでしょう。
議員が口元を手で隠す「癖」の理由
どちらかといえば、「歯並びが悪くて見せたくない(それだけで叩かれるから)」「その場の議題が自分にとって都合が悪い内容で、居心地が悪く顔を伏せたい」などの心理のほうが作用している気がします。
コロナ期間中にバッシングを避け、極力マスクや手元を抑える仕草を徹底していたという政治家的な心理も影響しているのかもしれません。
とにかく、国会中などの人前で透明容器の水を飲む機会の多い議員ほど、口元が見えないように隠したくなる場面は多いのは仕方のないこと。おそらく帰化人などとは関係なく、国会議員という性質上、口元を隠すのが「癖」になっている可能性は十分にありえます。
この理屈が通るなら、水を飲む時にいつも似たような仕草で口元を手で隠していた高校時代の女性国語教師は、在日韓国人だったということになってしまいます…。(彼女は割と強めの嫌韓思想でした)
これだけで韓国の帰化人、親韓と決めつけるには少し根拠が薄いと言えます。
朝鮮飲みをした日本の政治家が帰化人と非難されることについて
そもそもこの飲み方で「朝鮮飲み」といわれることで、政治家が朝鮮文化を持っていることで、何が問題か。
よく言われているのは、在日朝鮮人が日本国籍を得た(帰化人となった)後に、政治に参加すると、親韓の政策、韓国に寄った政策になってしまうのではないか、日本の国益より韓国の国益を優先してしまうのではないか、という論です。(その他にも中国など、国籍問わず)
たしかにこの話は、広く日本の事を想うなら、一理あります。ただ、その場合の判断基準は、飲み物の飲み方ではなく、「事実に基づいた帰化人である証拠」ではないでしょうか?なぜただの水の飲み方をあげつらって非難してしまうのでしょうか…。
もし帰化人を国政に参加させるのがリスクだと思うのであれば、明確な帰化人である証拠の提示をして言及すべきです。
「水を飲む時に口元を手で隠す人は『朝鮮飲み』だから、韓国人や在日帰化人」というのは、証拠の薄い論理飛躍です。このようなインパクトのある内容を発信拡散する際は、論理や根拠をしっかりと調べるのが大切。
このような扇動的な発信が増えると、有意義な話し合いも埋もれてしまいます。
もし仮に、本当に帰化人で外国に国益を流そうとしている政治家がいたとして、この状況を利用しないわけがありません。支援者にSNSで、日本人政治家を「この人は『朝鮮飲み』だから」という理由でバッシングさせ、自分は普通に水を飲むよう意識すればいいだけです。
帰化人を推測するのはいいですが、とにかく「根拠ある話」で議論しないと、むしろ逆効果になってしまう可能性もあるので注意が必要です。
(そもそも帰化人でもちゃんと日本想いの方は沢山いらっしゃるので、帰化人の国政参入へのリスクを声高に主張するのは本質的ではないと私は思っています)
