枕草子 現代語訳 春はあけぼの 解説|清少納言

枕草子ってなに?

枕草子 とは?
清少納言の書いた随筆集(=現代でいうエッセイ)の名称。まくらのそうし と読む。「をかし」という言葉を多く使用。平安時代・摂関期の貴族社会や自然美を主題として描いた。約300余段から成り、次の3種類に分けられる。
 
・「類聚(るいじゅう)章段」:「うつくしきもの」「ねたきもの」などの「ものづくし」
「山は」「虫は」など、同じ種類のものについて語ったもの
・「日記章段」:宮中での生活の様子を描いた日記的なもの
・「随想(ずいそう)章段」:自然描写「春は、あけぼの」や人間批評など、エッセイ的なもの

清少納言 とは? 
生没年未詳。清原元輔の娘の名前。せいしょうなごん と読む。一条天皇の中宮定子(藤原道隆の娘)に仕えた。歌人としても優れた才能を発揮しており、 『夜をこめて 鳥の空音は はかるとも 世に逢坂の 関はゆるさじ』は、小倉百人一首の62番。

枕草子 現代語訳|清少納言

春|枕草子 現代語訳

【原文】春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる

【現代訳】春は夜がほのぼのと明けようとする頃(が良い)。(日が昇るにつれて)だんだんと白んでいく、山際の辺りがいくらか明るくなって、紫がかっている雲が横に長く引いている様子(が良い)。

夏|枕草子 現代語訳

【原文】夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光て行くもをかし。雨など降るもをかし。

【現代訳】夏は夜(が良い)。月が出ている頃は言うまでもなく、(月が出ていない)闇夜もまた、蛍が多く飛び交っている(様子も良い)。また(たくさんではなくて)、ほんの一匹二匹が、ぼんやりと光って飛んでいくのも趣がある。雨が降るのも趣があって良い。

秋|枕草子 現代語訳

【原文】秋は夕暮れ。夕日の差して山の端いと近うなりたるに、烏(からす)の寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁(かり)などの連(つら)ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音(おと)、虫の音(ね)など、はた言ふべきにあらず。

【現代訳】秋は夕暮れ(が良い)。夕日が差し込んで山の端にとても近くなっているときに、烏が寝床へ帰ろうとして、三羽四羽、二羽三羽と飛び急いでいる様子さえしみじみと心打たれる。言うまでもなく雁などが隊列を組んで飛んでいるのが、(遠くに)大変小さく見えるのは、とても趣があって良い。すっかり日が落ちてから(聞こえてくる)、風の音や虫の鳴く音などは、言うまでもなく(すばらしい)。

冬|枕草子 現代語訳

【原文】冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。


【現代訳】冬は早朝(が良い)。雪が降(り積も)っているのは言うまでもなく(素晴らしく)、霜が(降りて)とても白いのも、またそうでなくてもとても寒い(早朝)に、火などを急いでおこして、(廊下などを)炭を持って移動するのも、たいそう(冬の朝に)ふさわしい。昼になって、生暖かく(寒さが)だんだんとやわらいでいくと、火桶に入った炭火も白い灰が多くなっているのは(見た目が)よくない。

ポイント紹介!枕草子

ポイント① をかし|枕草子 清少納言 現代語訳

をかしを多様!『枕草子』は「※をかしの文学」といわれています。
ちなみに、「※あはれの文学」といわれているのは『源氏物語』です。
※「をかし」=明るい趣、「あはれ」=しみじみとした趣

ポイント② あえて言わずにインパクトを|枕草子 清少納言 現代語訳

冒頭部分は、「春は、あけぼの」と「季節+時間帯」のみで表現されています。「春はあけぼの(がよい)」、「春はあけぼのが(とても趣がある)」と推測させることで読み手に伝えています。

ポイント③ 対比の表現|枕草子 清少納言 現代語訳

四季の出だしが、「春は、あけぼの」「夏は、夜」「秋は、夕ぐれ」「冬は、つとめて」と、春夏秋冬でそれぞれ対になっています。

ポイント④ 天象の表現|枕草子 清少納言 現代語訳

四季に、それぞれ「天象」が記されています。
春:紫がかった雲
夏:満月(月の明るいころ)、闇(蛍は飛んでいる)、雨(蛍もいない・真っ暗闇)
秋:夕暮れ
冬:雪、霜、寒気

ポイント⑤ 光の表現|枕草子 清少納言 現代語訳

四季に、それぞれ「光」がわかるような描写があります。
春:明け方の空(夜が明けて明るくなってきた) / 夏:月、蛍(夜の中にホタルの光が浮かぶ) / 秋:夕日(夕方のオレンジの景色) / 冬:雪、炭火(薄暗い雪の日と炭火の明かり)

ポイント⑥ 視覚から聴覚へ|枕草子 清少納言 現代語訳

「視覚」(=夕暮れに烏や雁が飛んでいる様子)から入り、日没になると「聴覚」(=風の音や虫の声など)に変わっていきます。

ポイント⑦ 視覚から聴覚へ|枕草子 清少納言 現代語訳

冬に限り、宮廷での日常生活が描かれています。前述の「視覚」や「聴覚」に加え、寒さなどの「皮膚感覚」もでてきて、さまざまな感覚器官が研ぎ澄まされていたのですね。
 
さらに、ずっと「をかし」「をかし」と続けてきたのに、最後は「わろし」で終わるというオチも意外性があっておもしろい部分です。

ポイント⑧ テストに出る対照語|枕草子 清少納言 現代語訳

「やまぎは(山際)」:「やまのは(山の端)」は、対照語で、試験によく出ます!
 
山際(やまぎは):空と山の境目の線で、のほう。空のほう!
山の端(やまのは):空に接する山の部分。?「山の端っこ(にある空に接している山部分)」と漢字で覚えておけば忘れません!「山のはしっこ」の「端(は)」!

まぎわらしいですね。

テストに出やすい問題2つ!|枕草子

問1)次の①~③を現代仮名遣いに直した読み(発音)をひらがなで答えよ。


①やうやう     
②やまぎは    
③をかし

答え)
①ようよう
②やまぎわ
③おかし

問2)次の①・②の漢字の読みを現代仮名遣いで書け。


①烏       
②火桶

答え)
①からす
②ひおけ

テストに出やすい文学史問題|枕草子現代語訳

問題)
問1 『枕草子』の作者を答えよ。
問2 『枕草子』は何年前後に成立した作品か、また、それは何時代中期かも答えよ。
問3 『枕草子』のジャンルを答えよ。
問4 『枕草子』は三大随筆のうちの一つである。残り2つの作品と作者を答えよ。

答え)
問1 清少納言
問2 1000年(前後)、平安(時代)
問3 随筆
問4 『方丈記』鴨長明 /『徒然草』吉田兼好 (兼好法師)

 

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ライカ
美容健康オタク。質の良いものに囲まれて暮らしたい。最近甘酒作りにはまっている。