正月は古来より日本に伝わる、最も伝統的な行事の一つ。門松・しめ飾り・鏡餅などを、新年を迎える前に正月飾りとして玄関先に飾るのが一般的で、現在もその風習が受け継がれています。
ただ、そんな正月飾りの本来の意味や由来をご存知の方は少ないのではないでしょうか?正月飾りにはどんな由来があるのか、飾る期間はいつからいつまでか、処分方法などについてご紹介いたします。
お正月飾りの由来と意味
正月行事とは、「年神様」というその年の神様を迎え、祀るために行われてきた行事。農耕民族である日本人は、年神様を「五穀豊穣の神」として古くより重んじてきました。
また、年神様は生命力や幸福そのものをもたらしてくれるとも言われていることから、お正月が近付くと門松やしめ飾りを玄関先に飾り、年神様を祀る準備をしていたのです。
お正月飾りの種類
お正月飾り① – 門松
門松を飾るのに用いられる松・竹・梅は、「歳寒三友(厳寒三友)」と呼ばれ、寒い冬の時期でも葉が枯れないため、その強さからお正月の「縁起物」として親しまれてきました。
門松の正月花 – 松
松は常緑樹で1年中青い葉をつけるため「永遠の命」の象徴と言われています。松の中には樹齢数千年のものもあり、「不老長寿」の意味合いもあるため、縁起が良いとされています。「祀る」にもつながる樹木で、おめでたいことから古くより縁起事に用いられてきました。
門松の正月花 – 竹
竹は寒い冬でも葉が落ちずに青々としています。台風などの強風の中でも折れず曲がらず真っすぐに成長する姿から、「誠実な心」「強い志」の象徴となっています。その伸びる成長スピードからも、生命力の象徴という意味合いが強いのが竹なのです。
門松の正月花 – 梅
新春に花開く梅は、桜など他の花よりも先駆けて咲くため、「出世」「開運」の象徴とされています。また、残冬の寒さに打ち勝って清廉な花を咲かせ、芳香を漂わせることからもとても縁起の良い花とされます。
1年の始まりにふさわしい花として飾られ、門松には紅梅・白梅の両方を飾るのが一般的となっています。
その他の正月花 – 蘭、菊
正月花は、松竹梅の他にも菊や蘭を使用することがあります。菊というと、お供えに使うような「輪菊」と「小菊」を思い浮かべて縁起が悪いようなイメージもありますが、実はとても縁起のよい花。
古来中国では、蘭、竹、菊、梅の4種は「四君子(しくんし)」と称され、草木の中の君子として扱われていました。4種の植物の持つ以下の特性がそれぞれ、君子たる特性に近いとされ、文人画の代表的な素材となったのです。
・蘭…気高く気品を感じさせる優しい香り。
・竹…力強く曲がらず真っすぐな気質。
・梅…どの花よりも最初に清廉な花を咲かせる凛々しさ。
・菊…晩秋の寒さの中で鮮やかに咲く美しさ。
お供え用とされている輪菊や小菊を避ければ、蘭も菊も立派な祝い花となるので、正月飾りでアレンジをしたい時などには参考にしてみてくださいね。
お正月飾り② – しめ飾り
玄関先にしめ縄を飾るのは、神社がしめ縄を張りめぐらせているのと同じ意味で、神様を祀る神聖な場所に不浄なものを持ちこませない目的があります。
しめ飾りとしめ縄で違いがわからない方も多いかと思いますが、「しめ縄」は神様が宿る場所、家庭では神棚に飾るもの。「しめ飾り」は、しめ縄に縁起物を飾り付け、玄関先に飾る正月特有の飾りものです。
しめ飾りに使われる材料には、清浄な心を表す「裏白(うらじろ)」、一族代々の繁栄を意味する「橙(だいだい)」、神の力が宿る紙「御幣(ごへい)」、家系が長く続くことを願う「ゆずり葉」などがあります。
裏白(ウラジロ)
裏白は、左右に2枚の葉が広がっている様子から「夫婦円満」を、さらに葉の裏が白いことから「清純な心」を表しています。
橙(ダイダイ)
橙は1度木に実ると何年も木から落ちずにいるため、1つの樹に何代もの橙が実っていることも多いです。このことから、橙は「一族代々の繁栄」を意味します。
ゆずり葉(ユズリハ)
新しい葉が伸びた後、古い葉が黄色く色づいて落葉する様子が特徴的なゆずり葉。次の世代に「譲る」という意味合いを連想させるため、「新しい世代への時代交代」の願いが込められています。
お正月飾り③ – 鏡餅
鏡餅は神様の拠り所。大小2つの丸いお餅には「円満に新たな1年を重ねる」「その年の豊作を祈願し、新しい門出を祝う」などの意味合いがあります。
鏡餅の丸い形は「心臓」の意味もあり、神社に祭られていた聖なる丸い鏡「神鏡」を形取って、稲作生活に欠かせない「太陽」の形を表すともいわれています。そしてこの一つ一つの飾りにも意味があります。
・橙(だいだい)・・・子孫代々(だいだい)の繁栄を願う。
・御幣(ごへい)・・・赤の御幣は魔よけ。繁栄を願う。
・四方紅(しほうべに)・・・災いを払い、繁栄を願う。
・裏白(うらじろ)・・・長寿を願う。
鏡餅は年末から床の間やリビングの高いところに飾り、鏡開きの日に下ろします。お餅を包丁で「切る」のは切腹を連想させるため禁忌とされ、手や木づちなどで「割る」のが一般的となりました。ただ、この「割る」も鏡を割る=縁起が悪いということで、末広がりを意味する「開く」という言葉が用いられ「鏡開き」となりました。
お正月飾りはいつからいつまで飾る?
では、お正月飾りは一体いつからいつまで飾るのが一般的なのでしょうか?細かく解説します。
いつから飾る?
地域によっても前後しますが、12月13日頃からお正月の準備をはじめると同時に、正月飾りを飾るのが正式な期間のようです。ただ、近年は12月25日にクリスマスがあるため、26日以降に正月飾りを飾るケースが多くなってきています。
ちなみに、12月13日は「松迎え」や「正月事はじめ」と言われており、お正月に年神様を迎えるため、ススを掃うなどのお掃除や、お雑煮などを作るために必要な薪を集めるという習慣もあったそうです。
28日なら、末広がりの「八」で縁起が良い日ともされています。
避けた方が良い日
12月29日と、12月31日は、正月飾りを飾り始めるのには縁起が悪い日とされています。
29日は「二重苦」を連想させるため。31日は、「一夜飾り」と呼ばれ、急ごしらえでの用意が年神様に対して誠意を欠く、と考えられているからです。「うっかり飾るのが遅くなってしまった!」ということもあるかと思いますが、できるだけ早めに飾れる準備ができると良いですね。
いつまで飾る?片づける時期は?
お正月飾りは、基本的に松の内に片付けるのが通常。「松の内」とは、もともと元旦から15日までの期間「小正月」のことをさしましたが、最近では、「大正月」元旦から7日までの期間、が一般的となってきています。
地域ごとに差異がありますが、関東では七草粥の7日までの「小正月」の期間、関西では旧松の内の15日までの「大正月」の期間が目安とされています。
お正月飾りの処分方法
家庭での処分方法
実は家庭の一般ゴミとして廃棄しても問題ありません。その際には、各家庭でお清めをしっかりすることが大切です。
用意するのはゴミ袋、新聞紙、清めの塩です。新聞紙などの大きな紙を広げて正月飾りを置き、塩を左・右・左と三回かけ、そのままくるんでゴミ袋に入れましょう。他の一般ゴミと同じ袋では捨てないようにしましょう。
神社の「どんど焼き」
神社でのお正月飾りの焚き上げのことを「どんど焼き」と呼び、正月飾りの伝統的な処分方法として行われてきました。「どんど祭り」「左義長(さぎちょう)」とも呼ばれ、空き地などで行われる場合もあります。また、お正月飾りの他にダルマやお守りなども一緒に処分する事ができます。
どんど焼きが行われるのは松の内の最終日、1月15日に行われるのが一般的ですが、その周辺の土日などに開かれる事も多いので、最寄りの地域のどんど焼き実施日程もチェックしてみましょう。どんど焼きの火にあたることで、1年間健康に過ごせるとも言われています。